化粧品に配合されているアミノ酸の役割について。
化粧品に配合されているアミノ酸の役割
化粧品に配合されているアミノ酸の多くは保湿効果を目的として配合されています。
皮膚の水分量の約17~18%は天然保湿因子(NMF)が維持しており、天然保湿因子(NMF)の約40%はアミノ酸で構成されています。
アミノ酸は一つの分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を持つ化合物であり、以下の図に示す一般式で表されます。
側鎖(R)の分子構造の形状の違いによって様々な種類のアミノ酸が存在しています。
化粧品に配合されているアミノ酸として、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリン、アルギニン、トレオニン、プロリン、タウリン、ロイシン、バリン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リシン、ヒスチジンなどが挙げられます。
アミノ酸に保湿効果がある理由
アミノ酸に保湿効果がある理由として水分子と同じ極性分子であることが挙げられます。
アミノ酸は水と同じ極性分子(分子内で電荷に隔たりがある物質)であるため、水と結合し保湿することができます。
水やアミノ酸などの物質を構成している最小の粒子を原子と言います。
原子を構成する粒子の内、マイナスの電気を持つ粒子を電子と言います。
水は水素原子(H)と酸素原子(O)の電子が相互作用することで結合し、水分子として存在しています。
分子は物質の性質を表す最小単位の粒子です。
水の構造は以下の図の通りです。
また、各原子によって電子を引き寄せる力が決まっており、その強さの程度を表した値を電気陰性度と言います。
水素原子(H)の電気陰性度は2.2、酸素原子(O)の電気陰性度は3.44です。
この電気陰性度の違いから、水分子のOは少しマイナスに帯電しています。一方で、水分子のHは少しプラスに帯電しています。
分子内で電荷に隔たりがあることを極性と言います。
水は上記の通り分子内で電荷に隔たりがあるため、極性分子に分類されます。
化粧品に配合されているアミノ酸も極性分子であり、特に水(H2O)と水素結合する(-OH基)を持っているため保湿効果があります。
化粧品におけるアミノ酸のその他の役割
化粧品に配合されているアミノ酸の多くは保湿成分として配合されていますが、その他の役割として配合されることが多いアミノ酸がアルギニンです。
アルギニンは塩基性(アルカリ性)のアミノ酸です。天然保湿因子(NMF)の約40%のアミノ酸の内、約10%はアルギニンが占めています。
化粧品におけるアルギニンの配合目的は、保湿剤、pH調整剤、ジェル化のための中和剤、ヘアコンディショニング剤です。
pH調整剤
アルギニンは塩基性(アルカリ性)のアミノ酸であるため、pHを調整するために配合されることがあります。
ジェル化のための中和剤
高分子の増粘剤を中和して網目状の結合を形成しジェル状の化粧品を作るために配合されることがあります。
ジェル状の化粧品に配合されている場合ジェル化のための中和剤である可能性が考えられます。
ヘアコンディショニング剤
アルギニンはpH9以下ではカチオン性(プラスの電荷)となるため、pH4~pH9の範囲で毛髪に吸着しヘアコンディショニング剤として働きます。
また、毛髪に吸着しにくい酸性や中性のアミノ酸の吸着を助ける働きを持ちます。
トリートメントに比較的高配合されている場合ヘアコンディショニング剤である可能性が考えられます。