貧血は主に鉄不足によって起こり、動悸、息切れ、めまい、吐き気など様々な症状を引き起こします。
また、女性は月経時の出血によって鉄不足になり貧血を起こしやすいため、食品から鉄を効率良く摂取することが貧血を予防するのに重要であると考えられます。
そこで、鉄を効率良く摂取し、貧血を予防する方法について話していきたいと思います。
貧血と鉄不足
貧血は赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなり、酸素を全身に運搬できなくなることで起こる症状です。
ヘモグロビンは鉄とポルフィリン複合体からなるヘム鉄とタンパク質であるグロビンからできており、酸素分子と結合して酸素を肺から全身に運搬する働きをします。
鉄が不足するとヘモグロビンの生成量が減少してしまうため、酸素を全身に運搬できなくなり貧血を起こしてしまいます。
このように、酸素不足によって貧血が引き起こされると、頭痛、めまい、動悸、息切れ、吐き気などの症状が出てきます。
体内の鉄
鉄は体内に約4g存在しており、機能鉄と貯蔵鉄に分類されます。
機能鉄は赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンなどの構成成分であり、酸素を肺から全身に運搬する役割等を果たしています。
機能鉄は総鉄量の約70%を占めており、その内訳は、ヘモグロビン(65%)、ミオグロビン(3~5%)、非ヘム含鉄酵素(0.5%)です。
貯蔵鉄は鉄結合性タンパク質であるフィリチンや細胞内及び細胞間隙に存在するヘモシデリンに含まれる鉄であり、機能鉄が不足した時に利用されます。
体内の老廃化した赤血球はマクロファージによって処理され再利用されており、体内の鉄のほとんどは再利用された赤血球に含まれる鉄です。
そのため、体外に排出される鉄は一日で約1mg程度と微量ですが、それでも鉄が不足し続けると貯蔵鉄が減少し、さらに機能鉄が減少することでヘモグロビンの生合成量が減少し貧血につながります。
このことから、食品から鉄を効率良く摂取することが貧血の予防につながると考えられます。
一方で、鉄は腸の粘膜に存在するフィリチンによって吸収の促進と抑制が調節されているため、体内に吸収されにくい仕組みになっています。
そのため、食物からの鉄の吸収率は悪く、約10%程度だと言われています。
ヘム鉄と非ヘム鉄
食品中の鉄は動物性食品に含まれるヘム鉄と植物性食品に含まれる非ヘム鉄がありますが、特に非ヘム鉄の吸収率は非常に悪く、ヘム鉄の吸収率が23%~35%であるのに対して非ヘム鉄の吸収率は5%程度です。
ヘム鉄と非ヘム鉄では吸収のメカニズムが異なっており、ヘム鉄はそのままの状態で吸収されますが、非ヘム鉄は鉄イオンや鉄キレートとして可溶化されてから吸収されます。
食品中の非ヘム鉄は一般的には三価鉄(Fe3+)として存在していますが、三価鉄(Fe3+)は吸収効率が悪いため体内に吸収される際に吸収効率の良い二価鉄(Fe2+)に還元される必要があります。
これらの吸収メカニズムの違いにより、ヘム鉄の吸収率に比べて非ヘム鉄の吸収率が低いのではないかと考えられます。
また、ヘム鉄の吸収は食品成分の影響をあまり受けないが、非ヘム鉄の吸収は食品成分に大きく左右されます。この食品成分から受ける影響の違いも、ヘム鉄の吸収率に比べて非ヘム鉄の吸収率が低い要因であると考えられます。
鉄を効率良く摂取する方法
非ヘム鉄の吸収は食品成分に大きく左右されますが、コーヒーやお茶などに含まれるタンニン、玄米などの穀類や豆類に含まれるフィチン酸、そして食物繊維は鉄イオンを難溶解性の塩にして非ヘム鉄の吸収を阻害します。
一方で、ビタミンCは三価鉄(Fe3+)を吸収効率の良い二価鉄(Fe2+)に変化させる作用を持っているため、非ヘム鉄の吸収を促進します。
また、タンパク質は腸管内で鉄の可溶化を促進するため、非ヘム鉄の吸収を促進します。
これらのことから、非ヘム鉄を効率良く摂取するには、非ヘム鉄とタンニン、フィチン酸、食物繊維の食べ合わせを控え、非ヘム鉄とビタミンC、タンパク質を一緒に食べることが重要であると考えられます。
このように、食品から鉄を効率良く摂取することが貧血の予防につながると考えられます。