油性成分

化粧品に使用されている油性成分の種類と特徴

化粧品には炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸、油脂、ロウ(ワックス)、エステル、シリコンなど様々な油性成分が使用されています。油性成分は主に乳液やクリームのエモリエント剤、クレンジング料の洗浄成分などとして配合されており、油性成分の種類と特徴を知っておくことでより自分に合った化粧品を選ぶことができると考えられます。

化粧品に使用されている油性成分の種類と特徴

水と油は分子構造の違いによりそれぞれの性質が異なるため、混ざらない性質があります。

水は極性分子(分子内で電荷に隔たりがある物質)、油は無極性分子(分子内で電荷に隔たりがない物質)です。

化粧品に使用されている油性成分は炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸、油脂、ロウ(ワックス)、エステル、シリコンに分けられます。

分子構造上、無極性分子に近い油性成分ほど水に馴染まない性質があります。

水や油などの物質を構成している最小の粒子を原子と言います。

原子
原子の構造

原子を構成する粒子の内、マイナスの電気を持つ粒子を電子と言います。

水は水素原子(H)と酸素原子(O)の電子が相互作用することで結合し、水分子として存在しています。

分子は物質の性質を表す最小単位の粒子です。

水の構造は以下の図の通りです。

 

水分子

 

また、各原子によって電子を引き寄せる力が決まっており、その強さの程度を表した値を電気陰性度と言います。

水素原子(H)の電気陰性度は2.2、酸素原子(O)の電気陰性度は3.44です。

この電気陰性度の違いから、水分子のOは少しマイナスに帯電しています。一方で、水分子のHは少しプラスに帯電しています。

分子内で電荷に隔たりがあることを極性と言います。

水は上記の通り分子内で電荷に隔たりがあるため、極性分子に分類されます。

一方で、油の構造は以下の図の通りです。

炭化水素

上記の図は炭化水素と呼ばれる炭素原子(C)と水素原子(H)だけできた油性成分です。

炭素(C)の電気陰性度は2.55、水素(H)の電気陰性度は2.2です。

炭素(C)と水素(H)の電気陰性度はほぼ同じであるため、油は分子内における電荷の隔たりがほぼありません。

油は分子内における電荷の隔たりがほぼ無いことから無極性分子に分類されます。

水は極性分子、油は無極性分子です。

極性分子は極性分子同士で混ざる性質があり、無極性分子は無極性分子に混ざりやすい性質があります。

これらのことから水と油は極性が異なるため混ざらない性質があります。

炭化水素

炭化水素は炭素(C)と水素(H)だけでできた油性成分です。

炭化水素(n=1,2,3…..)

炭化水素

炭化水素は無極性分子であるため、極性分子である水と馴染まない性質があります。

炭化水素は高いエモリエント効果があります。

エモリエント効果とは油性成分が肌をコーティングすることで水分の蒸発を防ぐ効果です。

化粧品に使用されている炭化水素として、スクワラン、ミネラルオイル、ワセリン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、イソドデカン、イソヘキサデカンなどが挙げられます。

高級アルコール

高級アルコールは炭素(C)と水素(H)だけで構成される炭化水素にヒドロキシ基(OH基)が結合した油性成分です。

高級アルコール

高級アルコール

高級アルコールは分子内にヒドロキシ基(OH基)を有しており極性分子であるため、油性成分の中では比較的水に馴染みやすい性質があります。

高級アルコールは主にクリームのかたさ調整剤、乳化補助剤、エモリエント剤として使用されています。

化粧品に使用されている高級アルコールとして、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、オクチルドデカノールなどが挙げられます。

高級脂肪酸

高級脂肪酸は炭素(C)と水素(H)だけで構成される炭化水素にカルボキシ基(COOH基)が結合した油性成分です。

高級脂肪酸

高級脂肪酸

高級脂肪酸は分子内にカルボキシ基(COOH基)を有しており極性分子であるため、油性成分の中では比較的水に馴染みやすい性質があります。

高級脂肪酸は主に水酸化Kなどのアルカリ剤との中和反応により石鹸を合成するのに使用されています。

化粧品に使用されている高級脂肪酸として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などが挙げられます。

油脂

油脂は高級脂肪酸3分子とグリセリン1分子が結合した油性成分です。

油脂

油脂

油脂は両端を親油基に挟まれており電荷が分散されているため、極性が低く水に馴染みにくい性質があります。

皮膚の水分量は基本的に皮脂、NMF(天然保湿因子)、細胞間脂質によって一定に保たれています。

皮脂は肌をコーティングすることで水分の蒸発を防ぐ役割があります。

油脂は皮脂の主成分であるため、肌馴染みがよく、高いエモリエント効果があります。

そのため、化粧品においては主にエモリエント剤として使用されています。

化粧品に使用されている油脂としてマカダミアナッツ油、オリーブ果実油、アルガニアスピノサ核油、シア脂、馬油、ダイズ油などが挙げられます。

ロウ(ワックス)

ロウ(ワックス)は高級脂肪酸と高級アルコールが結合した油性成分です。

ロウ(ワックス)

ロウ(ワックス)

ロウ(ワックス)は両端を親油基に挟まれており電荷が分散されているため、極性が低く水に馴染みにくい性質があります。

ほとんどのロウ(ワックス)は常温で個体であり、温度安定性、硬度、光沢に優れた特徴があります。

ロウ(ワックス)は主にクリームのかたさ調整、つや向上、エモリエント剤として使用されています。

化粧品に使用されているロウ(ワックス)として、ホホバ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、ラノリンなどが挙げられます。

エステル

エステルはカルボン酸とアルコールが脱水縮合した油性成分です。

エステル

エステル

エステルは両端を親油基に挟まれており電荷が分散されているため、極性が低く水に馴染みにくい性質があります。

カルボン酸とアルコールの組み合わせにより様々なエステルが合成されており、最も種類の多い油性成分です。

エステルはエモリエント剤、クリームのかたさ調整剤、光沢付与剤、感触改良剤などとして使用されています。

化粧品に使用されているエステルとして、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸セチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、トリエチルヘキサノインなどが挙げられます。

シリコン

シリコンはSi(ケイ素)という元素で、化粧品などに配合されているのはシリコーンであり、SiO(酸化ケイ素)です。

シリコーンはケイ素(Si)と酸素(O)が鎖状に結合したポリマーです。

シリコーン

シリコン

シリコーンは無極性分子であるため、極性分子である水と馴染まない性質があります。

また、シリコーンは安定性、耐熱性、耐酸化性、撥水性、皮膜形成作用に優れ、サラッとした感触が特徴です。

そのため、シリコーンはべたつきの抑制、コーティング剤、感触改良剤などとして使用されています。

化粧品に使用されているシリコーンとして、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、アモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、シクロメチコン、ジメチコノールなどが挙げられます。

油性成分は分子構造上、無極性分子に近いほど水と馴染まない性質であり、油性成分としての性質が強いです。

そのため、油性成分としての性質の強さは炭化水素>シリコン>エステル>ロウ(ワックス)>油脂>高級アルコール>高級脂肪酸であると考えられます。

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